浦和地方裁判所 平成2年(ワ)1107号 判決 1991年10月29日
原告
有限会社武蔵野ゴルフ練習所
ほか一名
被告
中島久美子
主文
一 被告は、原告有限会社武蔵野ゴルフ練習所に対し金二四一万四七五八円及びうち金二二一万四七五八円に対する平成二年一月一四日から支払済まで年五分の割合による金員を支払え。
二 被告は、原告田中久に対し金一二〇万円及びうち金一一〇万円に対する平成二年一月一四日から支払済まで年五分の割合による金員を支払え。
三 原告有限会社武蔵野ゴルフ練習所のその余の請求を棄却する。
四 訴訟費用は、原告有限会社武蔵野ゴルフ練習所と被告との間においては同原告に生じた費用の五分の三を被告の負担とし、その余は各自の負担とし、原告田中久と被告との間においては全部被告の負担とする。
五 この判決は第一及び第二項につき仮に執行することができる。
事実
第一当事者の求めた裁判
一 原告ら
1 被告は、原告有限会社武蔵野ゴルフ練習所に対し金三九七万九〇五八円及びうち金三六七万九〇五八円に対する平成二年一月一四日から支払済まで年五分の割合による金員を支払え。
2 主文第二項と同旨
3 訴訟費用は被告の負担とする。
4 仮執行の宣言(1及び2項につき)
二 被告
1 原告らの請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告らの負担とする。
第二当事者の主張
一 請求原因
1 原告有限会社武蔵野ゴルフ練習所(以下「原告会社」という。)は、ゴルフ練習所やテニスコートを経営している会社で、原告田中久(以下「原告田中」という。)は、原告会社の従業員である。
2 事故の発生
(1) 日時 平成二年一月一三日午後一〇時一五分ころ
(2) 場所 浦和市根岸三丁目二二番地一五号先路上の交差点
(3) 加害車両 普通乗用自動車(大宮五八ま六〇九四)
(4) 右運転者 被告
(5) 被害車両 左記普通乗用自動車(以下「本件車両」という。)
記
車名 メルセデスベンツ
年製・形式 平成元年E―一二四〇五〇
登録番号 練馬三三ぬ九四九〇
初年度登録 平成元年五月二九日
(6) 右所有者 原告会社
(7) 右運転者 原告田中
(8) 態様 被告は、加害車両を運転中、赤信号を無視して加害車両を交差点に進入させ、加害車両の前部を本件車両の右側面部に衝突させた(以下「本件事故」という。)
3 損害
(1) 原告会社の損害
<1> 本件車両の修理費用 九六万〇七五八円
<2> 本件車両の評価損(格落ち) 三三万九〇〇〇円
<3> 代車使用料 二三七万九三〇〇円
被告は、本件事故直後、浦和警察署で原告田中に対し原告会社の支払つた代車料金を全額負担する旨約し、また、同年一月一四日、原告田中の要求に従い同車種の代車を探したが見つからなかつたため、「費用は全額負担するから原告田中の方で同車種の代車を探して欲しい」と要望して本件車両の代車料金を全額負担する旨約し、更に、被告の依頼を受けた保険会社社員佐野健二(以下「佐野」という。)も、前同日ころ、原告田中に対し同旨の約束をした。
原告会社は、従業員の原告田中が関東一円のゴルフ練習場やテニスコートまたはゴルフコースの設備や利用状況等の調査のため一日二~三〇〇キロメートル以上の距離を運転することが多く、交通事故に対する安全性の点も考慮して、平成元年五月末に本件車両を購入した。
本件車両に関する原告会社・被告間の修理協定の成立が平成二年一月二九日で、修理の完成が同年三月三一日で、この間が長いのは、本件車両が外国製のメルセデスベンツで初年度登録が平成元年五月二九日であることから、修理が片手間では済まないうえボデイーと足回りの修理を別々の工場でしなければならなかつたこと、本件車両用の平成元年度型スタツドレスタイヤの入荷に時間を要したことによる。
原告田中は、平成二年一月一四日から同年三月三一日までの間、有限会社エハラオートセンターから本件車両と同車種のメルセデスベンツを一日三万円で借り受け、同三月三一日、同社に代車料金二三七万九三〇〇円を支払つた。なお、本件車両の販売先であるヤナセ西川口店では代車料金が一日三万五〇〇〇円であつたので、原告田中は、知り合いの前記会社から安く借りることにしたのである。
<4> 弁護士費用 三〇万〇〇〇〇円
(2) 原告田中の損害
<1> 休業損害 一七万〇〇〇〇円
原告田中は、原告会社に勤務して月一七万円の給与を得ていたところ、本件事故による負傷のため、平成二年一月一三日から同年二月一三日まで就業が全く不可能であつた。
<2> 傷害慰謝料 九三万〇〇〇〇円
原告田中は、本件事故による負傷の治療のため、平成二年一月一六日から同年七月一三日まで(うち実治療日数九二日)浦和市の佐藤整形クリニツクに通院した。
<3> 弁護士費用 一〇万〇〇〇〇円
4 よつて、不法行為による損害賠償請求として、原告会社は、被告に対し三九七万九〇五八円及びうち弁護士費用三〇万円を除く三六七万九〇五八円に対する本件事故の翌日である平成二年一月一四日から支払済まで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の、原告田中は、被告に対し一二〇万円及びうち弁護士費用一〇万円を除く一一〇万円に対する本件事故の翌日である平成二年一月一四日から支払済まで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の各支払いを求める。
二 請求原因に対する答弁
1 請求原因1の事実を認める。
なお、原告田中は原告会社代表者の子である。
2 同2の事実を認める。
3 同3のうち、(1)のうち<1>を認め、<2>及び<3>のうち修理協定の成立が平成二年一月二九日であることを認め、その余を否認し争い、<4>は知らず、(2)のうち<1>、<3>は知らず、<2>は争う。
4 同4を争う。
5 被告の反論
(1) 本件車両の評価損(格落ち)について
評価損が認められるのは、修理してもなお回復されない程の損害が生じ、かつ、下取り、転売等によつて交換価値の減少が現実化した場合に限られるべきである。
本件車両の損傷は、修理によつて回復しており、しかも処分により価値の減少が現実化しているわけでもないから、評価損は認められない。
(2) 代車使用料について
<1> 休車期間は、通常、一〇日ないし二週間が相当で、特段の事情の有無により右期間を延長または短縮すべきものであり、修理等の手続を著しく怠つたために生じた休車期間の代車使用料を全額賠償請求することはできないというべきである。
本件車両の修理着工に必要な修理協定が成立したのは、事故後一六日たつた平成二年一月二九日であるが、このように協定成立が遅れた理由は、原告田中が強硬に新車買替え及び評価損の支払を要求していたことによるのであり、これによつて修理着工が遅れたのであるから、右一六日間は代車相当期間から除外されるべきである。
<2> 本件修理は、技術的には一週間から一〇日で可能であるところ、修理完了までに長期間を要したのは、破損したスタツドレスタイヤ一本の入荷が遅れたためであるが、原告会社の住所地は埼玉県であつて積雪地ではなく、本件車両の使用目的からも積雪地のゴルフコース等に赴くとは考えられず、ノーマルタイヤでもチエーン装着により降雪地高速道路の走行も可能である。
原告会社は、本件車両購入時からノーマルタイヤ四本を所持しており、原告田中も右入荷の遅れは知つていたのであるから、修理の際、ノーマルタイヤを装着し、入荷時にスタツドレスタイヤを付け替えることにより、代車料の拡大を防ぐ合理的措置を採るべきであつた。
<3> したがつて、本件車両の修理相当期間は、最大限見ても一〇日から二週間であり、代車料としては五〇万円が相当である。
第三証拠
証拠の関係は、記録中の証拠関係目録記載のとおりである。
理由
一 本件事故が被告の信号無視の過失により発生し、原告会社所有の本件車両が損傷を受けたこと、原告田中が頸部、腹部、右肩部各挫傷の傷害を負つたことは、当事者間に争いがない。
したがつて、被告は、原告会社及び原告田中に対し民法七〇九条に基づき本件事故により生じた各損害を賠償する義務がある。
二 被告が賠償すべき損害額
1 原告会社の損害
(1) 本件車両の修理代 九六万〇七五八円
右事実は、当事者間に争いがない。
(2) 車両減価額 三三万九〇〇〇円
被告は、事故車両の減価があるといえるのは、修理によつてもなお回復されない程の損傷があり、かつ、下取りその他の処分により損害が現実化し、確実に把握できるようにならなければならないと主張するが、我が国においては、事故歴のある車両は一般的にそのこと自体をもつて忌み嫌われ、その交換価値が減少するとの事実は否定しえず(当裁判所に顕著である。)、したがつて、下取り等の処分を待つまでもなく事故による車両減価の損害は生じていると認めるのが相当である。
成立に争いのない甲第二号証(原本の存在も)、乙第一号証の一、二、弁論の全趣旨により成立を認める甲第三号証及び原告田中本人尋問の結果によれば、本件車両は、原告会社が平成元年五月末ころ新車として約一〇〇〇万円で購入したものであること、本件事故による本件車両の損傷箇所及び修理内容は、フロントサスペンシヨンシステムの修理その他若干の修理修正部分がある他はパネル、フエンダー等外部的な部品の交換が主なものであつて、部分塗装のなされていることが事故前と大きく異なるところであること、財団法人日本自動車査定協会は、本件車両には修理完了後もなお三三万九〇〇〇円分の価値の減少があると査定していることが認められる。
右協会の査定は、一般的に実際の市場価格よりかなり低い価格を想定してなされるものとされており、本件車両の銘柄、事故時の想定される残存価格、修理箇所、修理費等に照らし、同協会の査定分を更に減額すべき事情も認められないから、同査定分を本件車両の減価分と認めることとする。
(3) 代車使用料 九一万五〇〇〇円
(一) 原告田中本人尋問の結果及びこれにより成立を認める甲第四、第五号証によれば、原告会社(の原告田中)は、平成二年一月一四日から同年三月三一日までの七七日間、有限会社エハラオートセンターから本件車両と同車種のメルセデスベンツを借り受け、同三月三一日、その費用として一日当たり三万円、合計二三七万九三〇〇円を支払つたことを認めることができる。
(二) 原告会社は、原告会社(ないしその代理人ともいうべき原告田中)と被告との間に右金額全額を被告が負担するとの合意があつた旨主張するので、以下検討する。
<1> 原告会社は、被告が本件事故直後、浦和警察署内で右合意をしたと主張する。
原告田中及び被告各本人尋問の結果並びに弁論の全趣旨によると、被告が本件事故直後、浦和警察署内で原告田中の新車買替えの求めに応じて、これを承諾する念書を作成しかけたが、駆けつけた被告の姉に示唆されて途中で翻意してその作成を取り止めたこと、原告田中がその際被告に対し同車種の代車を強く要求し、その手配を求めたこと、被告が原告田中に対し同種の代車を探して後刻連絡する旨伝えたが、被告方で見つけられなかつたので、夕方、原告田中に対し原告方で探すよう伝え、原告田中が前記のとおりの期間、額で代車を借り受けたことを認めることができる。
右代車に関する合意に関し、原告田中は、被告が新車買替えの念書作成を取り止めた後「新車には替えられないが何でも誠意を尽くします。」と答えたと供述し、被告は、「自動車保険の範囲で誠意を尽くします。」と答えたと供述するところ、被告が自己の一方的な過失により高級外車を損傷させ、自己の経済能力や買替えの必要性を吟味判断することなく原告田中の強硬な求めに応じて一旦は新車買替えの念書を作成しようとしたことに照らし、事故直後でかなり気が動転していたものと推測され、敢えて冷静に考慮したうえで自動車保険の範囲内でとの条件を付したものとは認め難く、右認定経緯からすれば、被告の「誠意を尽くす。」との意は、期間・額を問わず原告会社の支出した代車料の全額負担を無条件に受け入れるというものではなく、新車買替えの要求には応じられないが、その余の合理的な損害は誠意をもつて支払い解決するという当然の趣旨を述べたものと認めるのが相当である。
<2> 次に原告会社は、被告が事故の翌日の一月一四日、被告との電話での会話の中で、前記合意をしたと主張し、原告田中は、これに沿う供述をし、被告は、一月一五日までの連休中のみ負担するとの条件であつたと供述するところ、その余の右各供述部分によつても、被告が特にこの際、明確に連休中のみとの条件を付けたと認めるべき事情は窺えず、かつ、被告は一五日以降の負担部分はどうするのかについても明確な見通しを持つていない状態で原告田中の調達した代車使用を容認していることが認められ、また、新車買替え要求までしていた原告田中も右条件が明言されていたらこれに応じたとは認め難いことに照らし、被告の右供述部分は採用できない。
反面、被告も、事故の翌日で未だ修理等について具体的な見通しが立たず保険会社とも連絡がつかない状態で、費用が幾らかかろうと原告会社の要求に何でも応ずるとの意思を表明していたとは認め難いことは、前同様であり、被告としては、当面差し迫つた連休中及びこれに引き続く通常予想される合理的な期間を念頭に置いて原告と応対していたと認めるのが相当である。
<3> 更に原告会社は、被告の依頼を受けた保険会社社員佐野が原告田中に対し代車使用料の全額負担を了承したと主張し、原告田中はこれに沿う供述をするが、証人佐野の証言によれば、同人は、保険会社社員としての立場から本件車両の修理に必要な期間は一〇日から二週間程度であり、一日当たり三万円として代車使用料は五〇万円程度が限度であるとの見通しを持つていたことが認められるから、その立場上、軽々しく原告田中の要求に応じたものとは認め難く、原告田中の右供述部分は採用できない。
<4> 以上のとおりで、原告会社と被告との間に代車使用料全額負担についての合意があつたとは認められない。
(三) そこで、以下客観的に相当な代車料金を検討する。
一般に、不法行為の被害者も信義則上、損害の拡大を最小限度に抑えるべき義務を負い、かつ、公平な分担の理念上、被害者を被害を受ける前の経済状態に回復させることが必要であるから、代車使用料についても、被害回復の上で相当と認められる期間及び額の使用料を損害額として認めるべきである。
<1> 相当期間について
原告会社は、七七日間が相当な期間であるとして、修理協定成立まで時間が掛かつたこと、本件車両が高級外車である関係上、修理が片手間では済まず、かつ、修理先が限られて混んでいたこと、外国製の部品(スタツドレスタイヤ)の調達に時間が掛かつたことをあげているので以下検討する。
a 原告会社と被告間の修理協定成立が平成二年一月二九日であることは、当事者間に争いがない。
そして、証人佐野及び原告田中の各供述によると、本件車両の修理を担当した修理工場は、当事者間に修理協定が成立するまでは修理に着工できなかつたこと、事故から協定成立までの一六日間、原告田中は、新車買替えの要求に代えて全塗装を強く要求し、これが修理協定成立までに時間が掛かつた主な理由であること、原告田中は、部分塗装では微妙な色違いが出て気分が悪いと考えていたこと、本件車両の損傷の程度、塗装技術から見ても右理由以外に全塗装にこだわるべき特段の事情もなかつたこと、本件車両が実際に修理工場に持ち込まれたのは修理協定成立直前の一月二七日ころであること、本件車両は、その販売店で修理取扱専門店であるヤナセ西川口店が当時混んでいるということで、取りあえず井上自動車工業に持ち込まれ、特殊な技術を要しない外部的な修理がなされた後、空きの出たヤナセ西川口店でフロントサスペンシヨンシステムやタイヤ関係の修理がなされたこと、交換が必要とされた本件車両の右側前部のスタツドレスタイヤ(一本)が輸入品で旧モデルであつたためにヤナセ西川口店への入荷が大幅に遅れ、このため修理が完了して本件車両が原告会社に戻つたのが前同年三月三一日であることをそれぞれ認めることができる。
右事情から考えるに、一般的に物損について慰謝料を認めない建前からすると、原告田中の全塗装の要求は被害回復の観点からは過大な要求であり、被告としてはこれに応ずる義務はないというべきであるから、これが修理協定の成立を遅らせた主な原因であり、かつ、実際に修理に出たのが事故から二週間後であることも考慮すれば、その責任はむしろ原告会社の側にあるというべきである。そして、前記のとおり、被害者も信義則上、損害拡大を最小限に抑えるべき義務があるから、本件において、事故発生から修理着工の前提である修理協定成立までの一六日間は、これを相当な代車使用期間として認めることはできない。
b 修理期間の長期化について
本件車両は高級外車であるから、修理の窓口が限定され、混雑等の理由で修理に長期間を要することがあることは、通常予想されることであり、やむを得ないことといえる。
次に、スタツドレスタイヤの調達による修理期間の長期化については、本件車両が積雪地を走行しておらず、これを走行するにしてもノーマルタイヤとチエーンの併用で賄えないこともないが、本件事故当時は冬で常に降雪の可能性はあり、修理の終了した三月末までは山間地のゴルフ場への走行もありうる本件車両が一応これに備えていることも不自然とはいえず、現実に雪がなくとも運転者としては降雪、積雪の事態に備えたいと思うのはむしろ当然であつて、現に本件車両は事故当時スタツドレスタイヤを装着していたものである。
そして、損害賠償の目的が被害前の経済状態に回復させることにあることからすると、被害に遭う前以上の負担を被害者に課することは許されないというべきであるから、現にスタツドレスタイヤを装着使用していた原告会社において、ノーマルタイヤの使用が現実に可能であるからといつて、これに応じなければならない程の信義則上の義務はないというべきである。
そして、本件車両が高級外車であり、部品輸入の窓口が限られ、部品の調達に日時を要する事態が生ずることも、通常予想されることであり、やむを得ないことといえる。
以上の検討により、本件において代車使用日数は、七七日から一六日を控除した六一日間を相当と認める。
<2> 一日当たりの使用料について
既述のとおり、被告は、本件事故直後、原告田中の強い要求により本件車両と同車種の代車の手配や原告側での代車調達の要請をしたりしているところ、不法行為の被害者は、常に必ず事故に遭つた被害車両と同種または同程度の代車料の賠償を求め得るものではなく、前述のように被害の拡大を最小限度に抑えるべき義務があるから、一日当たりの使用料金についても相当性の認められる範囲で賠償を求め得るに止まるものというべきである。
そして、車両の持つ機能の基本は輸送手段であり、これに様々な付加的価値が加わつて一台の車両を構成しているものといえるが、事故により使用できなかつた損害の填補という観点からは、輸送手段であることの側面を重視すべきである。
原告田中の供述によると、本件車両は、ゴルフ場の客の案内等にも使われていたことが認められるから、単に輸送手段の確保というに止まらない面があることは否定できないが、反面必ずメルセデスベンツを代車として使用しなければならない格別の事情があつたとは認められず、同供述によれば、現に原告田中は、本件車両購入前はトヨタ製のソアラを使用していたことが認められる。
以上の諸点に照らし、本件において一日当たりの代車使用料は、メルセデスベンツの使用料三万円の半額の一万五〇〇〇円を相当と認める。
<3> 以上のとおりで、代車使用料として被告に負担させる額は、一日当たり一万五〇〇〇円の六一日間で九一万五〇〇〇円と認める。
(4) 弁護士費用 二〇万〇〇〇〇円
本件事案の内容、審理経過、認容額等諸般の事情に照らし、本件事故と相当因果関係のある弁護士費用は二〇万円を相当と認める。
(5) したがつて、原告会社の損害は、合計二四一万四七五八円となる。
2 原告田中の損害
(1) 休業損害 一七万〇〇〇〇円
成立に争いのない甲第七号証、弁論の全趣旨により成立を認める甲第六号証、原告田中の供述によると、原告田中は、原告会社代表者の息子で、同会社の支配人として勤務し、本件事故当時の給料は、月額一七万円であつたこと、原告田中は、平成二年一月一三日から同年二月一三日までの三〇日間、本件事故による負傷のため就業が全く不能で、この間の給料が支給されなかつたことを認めることができる。
(2) 傷害慰謝料 九三万〇〇〇〇円
前掲甲第六号証及び原告田中の供述によると、原告田中は、平成二年一月一六日から同年七月一三日まで一八〇日間(実日数九二日、月平均一五日程度)佐藤整形外科クリニツクに通院していたことが認められる。
右通院期間その他一切の事情を考慮して、原告田中に対する傷害慰謝料は九三万円を相当と認める。
(3) 弁護士費用 一〇万〇〇〇〇円
本件事案の内容、審理経過、認容額等諸般の事情に照らし、本件事故と相当因果関係のある弁護士費用は一〇万円を相当と認める。
(4) したがつて、原告田中の損害は、合計一二〇万円となる。
三 結論
以上により、原告会社の本件請求は、合計二四一万四七五八円及びうち弁護士費用二〇万円の除く二二一万四七五八円に対する本件事故の翌日である平成二年一月一四日から支払済まで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める限度で理由があるからこれを認容し、その余は失当であるからこれを棄却し、原告田中の本件請求は、理由があるからこれを認容し、訴訟費用の負担について民事訴訟法八九条、九二条(原告会社との関係で)を、仮執行の宣言について同法一九六条を各適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 山崎健二)